金融庁と3メガバンクが“暗闘”を繰り広げている。銀行の「貸し渋り」を改善するため、4月から異例の集中検査に着手し、公的資金の再投入圧力を強める金融庁。3年前にやっと完済を終え、二度と政府の経営関与を受けたくない3メガは、自力での増資を急いでいる。株価が再び急落し貸し渋りの深刻化が懸念される“5月危機”がくすぶる中、水面下の攻防は激しさを増しそうだ。
■標的はみずほ?
「金融庁は本気でみずほに公的資金を注入しようとしている」(市場関係者)
金融業界では、こんな憶測が飛び交っている。
大手行と貸し渋りの苦情の多い地方銀行などを対象に始まった集中検査よりも前に、金融庁が、みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほコーポレート銀行への通常検査に着手し、そのまま集中検査に入ったことが、憶測の背景にある。
3月期末の日経平均株価が8000円台を回復したこともあり、みずほ首脳は「自己資本は心配ない」と、公的資金の必要性をきっぱりと否定する。
ただ、4月に入り、自己資本に組み込んでいる永久劣後債15億ドル(約1500億円)の任意償還を見送っており、市場は「できるだけ手元に資金を置いておきたいという思惑の表れ」(関係者)とみている。
市場では、5月にピークを迎える企業の決算発表で業績の悪化が鮮明になり、株価が急落し、銀行の融資余力が一段と低下する事態が懸念されている。銀行は業績が悪化した企業向けの融資を絞り、資金繰りに行き詰まる企業が続出しかねない。
3メガも3月期決算ではそろって最終赤字に転落する見込みで、その分、自己資本は棄損する。一段の資本増強は急務だ。
■ストップ安の洗礼
いち早く動いたのが、三井住友フィナンシャルグループだ。9日に3900億円の最終赤字予想を公表したのに併せ、最大8000億円に上る普通株の公募増資を打ち出した。
しかし、直近の同社の株価から単純計算すると、約3割も発行済み株数が増え、1株当たり利益の希薄化を招く。翌日の株式市場は、ストップ安の洗礼を浴びせた。
市場は「自力増資で何としても公的資金投入を回避したいようだが、今後の株価動向では、計画が頓挫する懸念もぬぐえない」(金融アナリスト)と、不安視している。
三菱UFJフィナンシャル・グループも、昨年から今年にかけて、9000億円近い増資を行った一方で、昨秋に米モルガン・スタンレーへの9000億円の巨額出資を行っており、資本に余裕があるわけではない。
だが、「はしの上げ下げまで、政府に指図されるような心境は味わいたくない」(ある3メガ幹部)との思いは共通している。
■からめ手の“陰謀”
「銀行は、本来求められている金融仲介機能を果たしていない」
これに対し、金融庁はいらだちを強めている。公的資金を再投入すれば、中小企業向け融資計画を策定させるなどで、監視を強めることができる。昨年12月には、金融機能強化法を復活させ、12兆円の公的資金枠を設定し、手ぐすねを引いて待ち構えている。
金融庁が期待を寄せ、3メガが心配する材料が、自己資本に対する規制強化の動きだ。国債決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会は2010年以降、健全性の目安として、従来の自己資本から優先株などを差し引き、より安定的な資本に限定した「中核的自己資本のコア部分」を重視する方針を打ち出した。
ある推計によると、リスク資産に対するコア部分の自己資本比率は、みずほが1%台、三井住友は2%台、三菱UFJで4%台。これを4%や8%に高める国際ルールが導入されれば、とても自力増資では対応できない。
金融庁は「3メガの中核的自己資本は海外勢に比べ小さい」(首脳)と、じわじわと圧力をかける。
「取引先企業に円滑に資金を供給していく」(塚本隆史みずほFG社長)という使命を果たすためだけでなく、攻めの経営に打って出る上でも、資本増強は欠かせない。
米シティグループが売りに出している日興コーディアル証券をめぐっては、3メガによる争奪戦が予想されている。買収金額は5000億円に上るといわれているが、ライバルに奪われるわけにはいかない。
資本増強の動向が、今後の成長戦略を大きく左右することになりそうだ。 産経新聞
■標的はみずほ?
「金融庁は本気でみずほに公的資金を注入しようとしている」(市場関係者)
金融業界では、こんな憶測が飛び交っている。
大手行と貸し渋りの苦情の多い地方銀行などを対象に始まった集中検査よりも前に、金融庁が、みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほコーポレート銀行への通常検査に着手し、そのまま集中検査に入ったことが、憶測の背景にある。
3月期末の日経平均株価が8000円台を回復したこともあり、みずほ首脳は「自己資本は心配ない」と、公的資金の必要性をきっぱりと否定する。
ただ、4月に入り、自己資本に組み込んでいる永久劣後債15億ドル(約1500億円)の任意償還を見送っており、市場は「できるだけ手元に資金を置いておきたいという思惑の表れ」(関係者)とみている。
市場では、5月にピークを迎える企業の決算発表で業績の悪化が鮮明になり、株価が急落し、銀行の融資余力が一段と低下する事態が懸念されている。銀行は業績が悪化した企業向けの融資を絞り、資金繰りに行き詰まる企業が続出しかねない。
3メガも3月期決算ではそろって最終赤字に転落する見込みで、その分、自己資本は棄損する。一段の資本増強は急務だ。
■ストップ安の洗礼
いち早く動いたのが、三井住友フィナンシャルグループだ。9日に3900億円の最終赤字予想を公表したのに併せ、最大8000億円に上る普通株の公募増資を打ち出した。
しかし、直近の同社の株価から単純計算すると、約3割も発行済み株数が増え、1株当たり利益の希薄化を招く。翌日の株式市場は、ストップ安の洗礼を浴びせた。
市場は「自力増資で何としても公的資金投入を回避したいようだが、今後の株価動向では、計画が頓挫する懸念もぬぐえない」(金融アナリスト)と、不安視している。
三菱UFJフィナンシャル・グループも、昨年から今年にかけて、9000億円近い増資を行った一方で、昨秋に米モルガン・スタンレーへの9000億円の巨額出資を行っており、資本に余裕があるわけではない。
だが、「はしの上げ下げまで、政府に指図されるような心境は味わいたくない」(ある3メガ幹部)との思いは共通している。
■からめ手の“陰謀”
「銀行は、本来求められている金融仲介機能を果たしていない」
これに対し、金融庁はいらだちを強めている。公的資金を再投入すれば、中小企業向け融資計画を策定させるなどで、監視を強めることができる。昨年12月には、金融機能強化法を復活させ、12兆円の公的資金枠を設定し、手ぐすねを引いて待ち構えている。
金融庁が期待を寄せ、3メガが心配する材料が、自己資本に対する規制強化の動きだ。国債決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会は2010年以降、健全性の目安として、従来の自己資本から優先株などを差し引き、より安定的な資本に限定した「中核的自己資本のコア部分」を重視する方針を打ち出した。
ある推計によると、リスク資産に対するコア部分の自己資本比率は、みずほが1%台、三井住友は2%台、三菱UFJで4%台。これを4%や8%に高める国際ルールが導入されれば、とても自力増資では対応できない。
金融庁は「3メガの中核的自己資本は海外勢に比べ小さい」(首脳)と、じわじわと圧力をかける。
「取引先企業に円滑に資金を供給していく」(塚本隆史みずほFG社長)という使命を果たすためだけでなく、攻めの経営に打って出る上でも、資本増強は欠かせない。
米シティグループが売りに出している日興コーディアル証券をめぐっては、3メガによる争奪戦が予想されている。買収金額は5000億円に上るといわれているが、ライバルに奪われるわけにはいかない。
資本増強の動向が、今後の成長戦略を大きく左右することになりそうだ。 産経新聞
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